夏目漱石 三四郎
三四郎
真っ直ぐで、要領が悪くて、
色々なことを深く考えて、逡巡してしまう。
出てくる言葉は、伝えたいことのひとかけら程しかなくて。
夏目漱石の小説には、不器用で一生懸命な人間がとても多いですね。
秋の空を見上げると、
美禰子がつぶやく、ストレイシープ を思い出します。
『迷子の英訳を知っていらしって』と言って三四郎に教えた言葉。
私の中でこの青春物語は、ドストエフスキーの白夜と並ぶ究極の恋愛小説です。
三四郎の美禰子への思い。
美禰子の気持ちはこの小説の中で曖昧でとらえどころがないのですが、
私は三四郎に惹かれていたのだと確信しています。
彼は自分の理想のタイプでは全然ないのに、それでも気になってしまう複雑な女心。
思わせぶりな態度をとったり気のない振りをしたり。
今も明治の時代も変わりませんね。
結婚を決めた彼女が、三四郎に消え入るようにつぶやく台詞。
「われは我が咎を知る。わが罪は常に我が前にあり」
美貌も才能も全てが揃ったこわいもの知らずの若いおじょうさんに終わりを告げ、
大人の女性になっていく美穪子が印象的です。
三四郎のほろ苦さもなんともいえない 。
私は美穪子の容姿をいつも彼女とオーバーラップさせてしまいます。
睦奥宗光夫人 陸奥亮子
知性と美貌を持った貴婦人。
(画像はお借りしました。ウィキペディア)
こちらは三四郎と美穪子が初めて出会う東京大学、三四郎池。
この出会いの場面もとても好きです。
今夏、所要で行った時の写真ですが、カラスが多い多い…。